2014/03/30
下村博文文部科学相は26日の衆院文科委員会で、河野談話、村山談話を「教科書検定基準の政府統一見解ではない」とし、その理由を「閣議決定を経ていないから」としました。(※1)
私たちはこの下村大臣の発言に強く抗議します。
この発言は、二重の意味で、犯罪的です。
1,河野談話・村山談話は政府の統一的見解である 下村大臣は「(教科書検定)基準における政府の統一的見解は、現時点で有効な閣議決定等に示されたものを指す。村山談話、河野談話自体は閣議決定されていない」としています。自らも「等」という言葉を用いて認めているとおり、政府の統一見解は、なにも閣議決定されたものだけではありません。
河野談話も村山談話も、当時の政府の意志として発信されました。そして世界に向けた「公約」としての大きな意味を持っています。現に外務省HPには両談話が掲載されています。安倍首相の「河野談話・村山談話の見直し」に国際社会が強く反発したことも、その証左に他なりません。
下村大臣は、河野談話・村山談話を「政府の統一的見解ではない」といいます。つまり、時の官房長官や首相が「勝手にしゃべったけだ」と?! そんなバカな話はありません。
現時点で、つまり第2次安倍内閣に至るまで、河野談話・村山談話は公的には継承されています。
なによりもそれが3月25日の日米韓首脳会談実現の前提となったのではないですか? 舌の根も乾かぬうちから「政府の統一的見解ではない」とは、安倍政権は一体どういうつもりなのでしょうか?!
2,村山談話は閣議決定されている しかも下村大臣は、決定的なウソをついています。
村山談話は閣議決定されています。
残念ながら
官邸のHPの閣議案件を見てみても、1997年以前のものは掲載されていませんでした。しかし全国行動の仲間が外務省に対して「閣議決定はあった」と確認しています。
また
朝日デジタルの村山談話の説明には、下記のようにありました。
【村山談話】
50回目の終戦記念日にあたる1995年8月15日に閣議決定した当時の村山富市首相による談話。「植民地支配と侵略によって、アジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えた」と公式に植民地支配を認め、「痛切な反省の意」と「心からのおわびの気持ち」を表明した。その後の内閣が受け継ぎ、政府の公式見解となっている。第1次安倍内閣でも安倍晋三首相が国会答弁で踏襲する考えを示している。
ここでは、「閣議決定した」ともあり、また「政府の公式見解となっている」ともあります。
しかし朝日新聞の情報では、極右とも言える下村大臣の頭では疑念しか生まれないかもしれません。そこで念を押して、櫻井よしこが2006年に産経新聞に寄稿した文章を引用します。(ただしこの引用部分も、2005年に西村眞悟の書いた文章を櫻井が引用したもの。)
95年8月15日、氏(村山首相)は、学者や谷野作太郎外政審議室長ら少数の官邸スタッフらと練り上げた談話を閣議に持ち込み、古川貞二郎官房副長官が読み上げた。「閣議室は水を打ったように静まり返った」と報じられた。
事前説明なしで突然出された談話に、閣僚は誰ひとり反論していない。自民党にとってこのことこそが痛恨の一事だ。
書いている内容や経過には批判したいところが大いにあるが、閣議決定を経たことそのものには疑問の余地もありません。村山談話は閣議決定されているのです。
さて、下村大臣は、これを知り得ない立場にあるでしょうか? 大臣という職責の者が国会答弁するにあたって、その事実関係を確認しないということがあるのでしょうか? (繰り返しますが、外務省は閣議決定があったと認めています。)
ありえません。
下村大臣は知っていてウソをついていたとしか思えません。
教科書には「竹島/独島」や「尖閣諸島/釣魚島」や「日の丸」「君が代」のことはなんとしても載せたいが、河野談話・村山談話は絶対に教科書に載せたくないという強い意志が、彼にウソをつかせているのでしょう。
このような人物に政治家の資質があるとは到底思えません。ましてや子どもたちの将来に責任を担う教育行政の長など、もってのほかです。
下村大臣は自らの詐術を認め、即刻文部科学大臣の職を辞任するべきです。
(だい)
(※1)朝日新聞デジタルより
河野・村山談話で文科相「教科書検定基準の政府統一見解でない」
2014年3月27日05時00分
下村博文文部科学相は26日の衆院文科委員会で、1月に改定した教科書検定基準に関する説明で河野談話と村山談話について「(両談話は)検定基準における『政府の統一的見解』にはあたらない」と述べた。両談話が閣議決定を経ていない点を理由に挙げた。
基準改定では、小中高校の社会科(地理歴史科)教科書で「閣議決定その他の方法で示された政府の統一的な見解がある場合、それに基づく記述」をするよう新たに定めた。下村氏は宮本岳志氏(共産)の質問に答え、「基準における政府の統一的見解は、現時点で有効な閣議決定等に示されたものを指す。村山談話、河野談話自体は閣議決定されていない」と説明した。
下村氏は朝日新聞の取材に対し、「閣議決定されていないという事実の説明をした」と答えた。
(朝日新聞にも一言苦言を申し上げたい。自身のサイトで、村山談話は閣議決定を経ていると書いておきながら、今回の事件ではなぜこのような無批判な報道の仕方をするのでしょうか。朝日新聞には「閣議決定されている」と電話で申し入れ、現在確認中です。)