大阪府教委の「慰安婦」補助教材に対する再要望書

 日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークと子どもたちに渡すなあぶない教科書大阪の会は、1月25日、大阪府教委に再要望書を提出しました。
 私たちはこの間、大阪府教育委員会が作成した「『慰安婦』に関する補助教材」に対して、私たちは11月10日に「抗議文および公開質問状」を提出しました。
 またこの件で、12月1日に府教委交渉をおこなったところです。
 そして12月9日、私たちの質問状に対し、大阪府教委は正式に文書で回答をしましたが、その内容は実質的には「無回答」に等しいものです。そのような回答で納得できるはずもありません。

 そこで私たちは、今回の再質問状を提出しました。これは12月28日の日韓外相会談での「合意」を受けて、その内容を副教材に反映することを求めるものです。
 日韓「合意」は、被害者にとっても、日本で支援活動をする私たちにとっても到底許容できるものではありません。
 しかし大阪府教委作成の教材は、河野談話を否定し、安倍談話を持ち上げ、「強制連行はなかった」=「日本軍「慰安婦」問題はウソだった」論に加担しかねないものだけに、大阪府の副教材を明確に河野談話に引き戻し、そして加害の事実をキチンと教え正しい歴史認識を育むための教材にしていかなければなりません。
 今後、大阪府教委に引き続き交渉を申し入れていきます。(だい)




2016年1月25日
大阪府教育委員会 様

日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク
子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会

大阪府教委の「慰安婦」補助教材に対する再要望書

 10月28日の教育委員会会議で「『慰安婦』に関する補助教材について」が示されました。これに対して11月10日に質問を行った私たちへの文書回答は、肝心の要望・質問には一切答えておらず、このような回答では到底納得出来ません。
 そんな中、12月28日の日韓外相会談において日本軍「慰安婦」問題について日韓政府レベルの「合意」がなされました。日本軍「慰安婦」問題について生徒の理解を深めるためには、この新たな状況を踏まえた教材が必要です。日本軍「慰安婦」被害者は、日本政府による公式の謝罪と賠償だけでなく、被害を二度と繰り返さないための教育の必要性を訴えています。日本軍「「慰安婦」問題の真の解決のためには、教育の果たす役割は重大です。是非とも、以下の要望事項について真摯に回答するよう求めます。

【要望事項】

(1)日韓「合意」の中に示された安倍首相の言葉を補助教材に追加すること

 日韓外相会談での「合意」は、日本軍「慰安婦」被害者不在でなされたものであり、「最終的な解決」とするにはほど遠いものでした。
しかし、安倍首相の言葉として「軍の関与のもとで女性の名誉と尊厳を傷つけた」ことを認め、「日本政府の責任」と「心からのお詫びと反省」を表明し、日本政府の立場を明らかにしたということは事実です。この発言は、1993年に閣議決定された河野談話が次のように述べたものを再確認し表明したものと考えられます。
 「慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。…その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。…いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。」
 これは、府教委が慰安婦の副教材を作成した際に踏まえたとされる、平成26 年1月に改正された高等学校教科用図書検定基準と平成27 年3月4日付の「学校における補助教材の適正な取扱いについて(通知)」の内容にも合致したものである以上、府教委の「補助教材」に、今回の「合意」内容を、河野談話と関連づけて追加するように求めます。

(2)日韓「合意」に対する被害者の声を補助教材に追加すること

 日韓「合意」に対し、韓国社会で批判の声があがり、大きな反対運動に発展しています。特にご高齢の被害者自身が「被害当事者である私たちを無視している」と怒りをあらわにしていることは、教材作成の際にも留意せざるを得ないと考えます。
 なによりこの教材が日本政府の見解を一方的に取り上げることに終始しており、被害者の証言など被害事実に一切触れていないことは、今回の「合意」同様、「被害者不在」と批判されても仕方がないものと、私たちは考えます。
 日韓「合意」の内容を取り上げることは当然のこと、この「合意」に対して被害者たちがどう受け止めているのかを記述することは、「多面的・多角的に考察し、公正に判断する能力をはぐくむため」にも必要不可欠です。
 被害者の証言を掲載することを改めて要望すると同時に、今回の「合意」を受けての被害者の受け止めも記載するよう求めます。
(参考)
今回の日韓「合意」を受けての、金福童さんの発言
「政府間で認めて、私たちには何の相談もなく妥結したなんて、いくら考えても納得できない。私たちはお金のために闘ってきたんじゃない。日本が過去の歴史を誤ったことを認め、安倍さんが立ちあがって謝罪し、日本の子どもたちが歴史をちゃんと学べるようにしてくれるならまだ納得できるが、自分たちだけで、賠償でもなく、何のためにやっているのか。少女の碑についても、民間人が過去の歴史の悲劇を子どもたちが学べるようにと建てたもの。
 こんな謝罪は受け入れられない。終わらせることはできない。謝罪するなら正しく謝罪するべきだし、韓国政府も解決と言うなら正しく解決しなければ。お互いが平和のためにやると言うなら、正しくやってくれることを願う。」

(3)補助教材から「Ⅱ吉田清治氏に関する記事の掲載とその取り消しについて」を削除すること

 前回の話し合いの中で府教委は、現行の高校教科書に松井知事が指摘した「間違った教科書」がないことを認めました。さらに、補助教材作成に当たって吉田証言に基づいた授業が行われているかどうかの調査さえも行っていないことが明らかになりました。結局、大阪府立高校で吉田証言に基づいた授業が行われている事実は確認されていませんでした。府教委が補助教材を作成する根拠が全くなかったことになります。
 また今回の日韓「合意」や河野談話に、吉田清治証言が影響を与えていないことは明白(2014年10月3日衆議院予算委員会での管官房長官の発言<辻元議員への回答>による)です。高校生向けの副教材で吉田証言問題を掲載することは、被害者たちに対してなされた「強制」を「連行時の状況」だけに限定して「強制はなかった」とする、河野談話にも反する誤った認識を高校生に伝えることです。それは、日韓「合意」で日本政府が河野談話を踏まえて「責任を痛感している」と認めているのを否定することにつながり、国際問題に発展しかねません。加えて、前回いただいた【質問3に関する回答】には、「史実の認識や評価に慎重を期す必要がある」ため「朝日新聞の記事取り消しと言う明白な事実と、種々の政府見解を取り上げることにしました。」とありますが、取り消した朝日新聞記事の内容そのものにも、明らかに重大な事実誤認があります。朝日新聞の論理は法的にも、そして国際的な人権基準に照らし合わせた批判にも耐えられるものではありません。(*事実誤認内容は下記)。
 従って、今回の補助機溶剤のうち吉田清治氏の関する記事に関する部分は、些末な事実に過ぎず、しかも朝日新聞の記事訂正についても事実誤認があるため、検定基準等にも入らないことはもちろん、学校現場に無用の混乱をもたらすことは明らかです。補助教材の「Ⅱ」を削除するように求めます。
以上

*2014年8月5日の朝日新聞が犯した事実誤認
①同日の朝日新聞は、河野談話が女性たちを連行した形態を、略取(暴力的に連行)と誘拐(騙して連行)に分けて問題にしている、と誤解した報道をおこなっています。吉田証言を否定したのも、その文脈においてです。しかし河野談話は、両者を区別なく「甘言(誘拐)、強圧(略取=強制連行)による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」としています。朝日新聞社の河野談話理解は間違っているのです。したがって朝日の見解は、政府見解とも無関係です。
②「慰安婦」問題の中心は、もちろん慰安所の中での強制的な性暴力が問題にありますが、その一方で連行そのものも強制であり、それ自体もう1つの犯罪を構成します。慰安婦犯罪とは、両者を合わせて一つのものとして、これまで存在してきました。そこには当然にも、誘拐という犯罪も含まれてきました。略取と言う暴力性を帯びた強制連行以外は犯罪では無いかのように語る傾向に対し、朝日新聞は「騙しても強制連行」と明確な立場で反論すべきであったにもかかわらず、今回そこから後退し、騙して連行したのであれば問題でないかのような記事を作成したことは根本的な問題でした。
③朝日新聞は、日本の刑法が「誘拐」と「略取」を一体のものと捉え、罪の軽重さえそこにくわえていないことさえ知っていないようです。「慰安婦」問題は、これまで日本の刑法でそのレベルにおいて捉えられてきましたし、これからもそうであるとする、幅広く支持された研究者の主張を斥け、狭い意味での連行だけを問題とする見解に押され、その1例にすぎない吉田証言の真偽にのみとらわれる誤りを行いました。吉田証言が取り上げるに足らないものであることは、1990年代の初めに、すでに研究上は決着ついた問題でした。
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