【抗議文】「慰安婦」碑の設置中止を求めるサンフランシスコ市議会への公開書簡に抗議します

2017年02月10日07:02  抗議文

吉村洋文 大阪市長 

                    

「慰安婦」碑の設置中止を求める

サンフランシスコ市議会への

公開書簡に抗議します

 大阪市の発表によれば、吉村市長は2月1日付のサンフランシスコ市長あて公開書簡を通じて、日本軍「慰安婦」を象徴する碑の設置に遺憾と懸念を表明されました。

 サンフランシスコ市議会で「慰安婦」碑の設置が満場一致で可決されたのは2015年9月22日のことでした。日系、韓国系を含む市民らが、過去の過ちを記憶し、人身売買や女性への暴力に反対するために設置を求めていたものです。当時の橋下大阪市長はこれに異を唱え、「『慰安婦』はどこの国にもあった」「なぜ日本だけが言われるのか。アンフェアだ」などと批判しました。結果的に、歴史的事実から目を背け、被害者を侮辱する発言を繰り返す橋下市長は国際的に大きな非難を浴び、予定していた姉妹都市サンフランシスコ市の訪問も断られる事態にまで発展したことは、吉村市長もよく御存じでしょう。

 ところが、このたび碑の設置が具体化する中で、再び吉村市長が同趣旨の公開書簡をサンフランシスコ市長宛に送ったことを知り、私たちは驚きあきれ、怒りを抑えることができません。大阪市民を代表する市長として、恥ずべき行為と言わざるを得ません。

 公開書簡で、市長は「慰安婦」問題について、日本政府はすでに「日韓合意」(2015.12.28)で責務を果たしており、碑の設置は「合意」の精神を傷つけるものであるとしています。しかし、「合意」で「お詫びと反省」「責任を痛感」と述べたことで責務は果たしたと言うのであれば、「慰安婦」被害者を記憶し、世界中から性的暴力と人身取引をなくすことを祈る碑の設置を、どうして「合意の精神に反する」「日本批判」と非難することができるのでしょうか。また、碑文の内容について「慰安婦」の数や規模、日本軍の関与の度合いなど、歴史研究者の間でも議論が分かれる不確かで一方的な主張であると述べています。このような主張はまさにこの間碑の設置に反対し、海を越えてサンフランシスコ議会に押しかけ、被害者を侮辱する発言をためらわなかった右派勢力と一致するものです。「合意」の精神を傷つけているのは市長ご自身ではありませんか。

 そもそも「日韓合意」は、韓国をはじめアジア各地の被害者の頭越しに「最終的不可逆的解決」を宣言したもので、女性の人権問題である「慰安婦」問題の解決にはなり得ません。

 また、市長は公開書簡で碑の設置が「両市の交流、果ては日米関係にも悪影響を及ぼす」と述べていますが、サンフランシスコ市長は返礼の書簡で、「サンフランシスコには、公的や民間によって建てられた多くの記念碑がある。『慰安婦』の碑は民間のプロジェクトが先導して進めたものだが、彼らは姉妹都市関係を壊そうと意図していない」「碑文の文言は事実で、記念碑の真の目的は被害者の名誉、市民の教育のため」ときっぱりと否定しているではないですか。市長の行動こそが姉妹都市サンフランシスコにとどまらず、国際社会の信頼を失うことになるのではないかと危惧します。

 私たちは公開書簡を通じてサンフランシスコ市議会に圧力をかけ、碑の設置を中止させようとした吉村市長の行為に強く抗議し、再びこのような恥ずべき行為を行わないこと、今後歴史認識をあらため、女性の人権が守られる社会の構築のために努力するよう求めます。

 2017年2月10日

日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク

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