演劇『白い花を隠す』

演劇『白い花を隠す』を観ました。石原燃作、小笠原響演出、Pカンパニー公演。女性国際戦犯法廷のNHK番組改ざん問題をテーマにした演劇です。下請けの番組制作会社を舞台にお話が進みます。

序盤、男女二人のディレクターの口から、戦犯法廷の意義が熱っぽく語られます。被害を受けた女性が口を開くことの重たさや衝撃、今なお続く戦時性暴力を克服するためにもこの戦犯法廷が重要だということ、そして責任者処罰の重要性がしっかりと描かれていました。被害者に寄り添いたいという姿勢をしっかりと描けていることで、「慰安婦」問題という難しいテーマにも関わらず、物語に深く感情移入できました。

物語の中盤、重要なファクターとなっている女性が、男性ディレクターに対してこう語りかけるのが、とても印象的でした。

「死者の声を聞きましたか?」

日韓合意以降、わたしたちは死者の声を特に意識するようになりました。生存している被害者は少なく、生きている被害者も病床にいたり認知症で物事の判断ができない人が多く、あのハルモニならこんなときなんと言っただろうか、あのロラならどのような行動をしただろうかということをよく思います。

2000年の戦犯法廷のときに、世界各地から被害者が東京に来て証言を行いましたが、その時ですら証言する被害者の背後には多くの亡くなられた被害者がいました。

裁きは生者のためだけにあるものではありません。

もちろん「合意」とやらも。

ディレクターのふたりは被害者に寄り添おうとして、しかしその熱い思いはNHK上層部の介入によってズタズタにされていきます。その背後に中川昭一(当時経産相)と安倍晋三(当時官房副長官)の圧力があったことは周知の事実ですよね。物語にはキャラクターとしての中川・安倍は登場しません。でも現場での焦燥と、NHKからの指示に従って番組を改変せざるを得なかった人の思い、そしてそのような改変に手を染めることのできない人の思いが、辛いほど伝わってきました。

制作から手を離し素材をNHKに渡すくらいなら、せめて、それでも、なんとか、すこしでもマシな番組にしたいという人の思い。ましてやNHKから仕事を受注する会社としては、食べていくために仕方がないのだという思い。

だがしかし、改変に手を染めることがジャーナリズムの道に反することであり、そしてなによりも被害者の気持ちを裏切っていくのだという思い。

結局は、「せめて、それでも、なんとか、すこしでも……」の積み重ねで今の2017年があるのだということを実感しました。

女性国際戦犯法廷はヒロヒト天皇らの戦争責任を裁きましたが、日本社会はそれを無視することで不処罰を貫きました。マスコミは報道しないことで、唯一報道しようとしたNHKは安倍の圧力に屈することで、そしてこの制作会社も「食べるために」改変に手を貸すことで、不処罰を貫いたのです。そして不処罰を貫いた結果の、犯罪的な安倍晋三を内閣総理大臣にまで支持し続けた結果の、日韓合意です。戦争責任はヒロヒト天皇らにありますが、不処罰の責任は、不処罰を貫くことで被害者たちをいまもなお傷つけている責任は、私たちにあります。

とても考えさせられる演劇でした。

明日も伊丹アイホールで、2月18日~3月5日はシアターグリーンBOX in BOX  THEATERで上演されます。みなさまぜひご覧になってください。

(だい)

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