上間陽子『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』

上間陽子著『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』(太田出版)を読みました。沖縄の5人のキャバ嬢と1人の援交をやっていた、10代(18歳未満も含む)の女性からの聴き取りが掲載されています。

ここに描かれている女性たちの共通項は、貧困と暴力です。ある程度想像はしていたことでしたが、こうやって活字となったものを読むとなかなか辛いものがあります。貧困に生まれ、生育する家庭環境が崩壊し、中学生でドロップアウト。両親からネグレクトされ彼氏からDV被害にあい、多くは出産してひとりで子を育てなければならず、生活のために割がよくて時間が制約されないキャバクラで働くことを選択せざるを得なくなります。10代で、しかも子どもを育てるとなると、選択肢はやはりここしかないのかという予測された絶望です。

文間からにじみ出る著者の労力を見つけるにつけ、心の中に闇や矛盾を抱えている女性たちに寄り添うことがどれだけ困難なことかということを考えてしまいます。

そしてこれらの体験は、日本軍「慰安婦」被害者となんと似通っていることか。朝鮮半島と台湾、つまり植民地下での「慰安婦」被害者の多くはやはり絶対的な貧困にあり、学校で最低限の教育を受けることも叶いませんでした。被害者たちは「自分がもっと賢かったら他の選択肢もあったのに」などと自分を責めますが、その「自己責任」はどの程度まで正当なのか。彼女たちにそれほど選択肢があったとは思えません。自己責任ということにしたい人たちは、結局は絶望的な境遇というものを理解していないのです。強制連行がなかったとしても、国家が罪をまぬがれる理由にはなりません。

本の帯で社会学者の岸政彦さんが「それは私たちに他人にとっては、不利な道を選んでいるようにしか見えないかもしれない」と厳しい批判を世間に対して寄せています。一人ひとりの体験談は、たしかに避けることのできない困難から最良の選択をしているようにしか見えません。社会はそれほどに冷淡です。

この本の中でも、妊娠して暴力的な彼氏に苦しんでいる時、生活保護課からは「世帯分離ができていないから保護の対象にはならない」、社協からは「まだ殴られてないのでシェルターはムリ」といわれています。たしかに制度上はそのとおりです。でもそれは冷淡です。役所が冷淡なのではなく、制度が、社会が冷淡なのです。

安倍首相なら「親が悪い」ということになるのでしょうか? そんな社会を治すためにも憲法24条を変えなければならないとでも。しかし彼女たちのはなんの罪もありません。貧困と暴力の連鎖は、個人の責任ではなく、まずは社会で抱えなければならない問題だし、貧困が解消しない限り絶対に解決しない問題です。ましてや国の考える教育政策などでなんとかできるはずがありません。

実はこの本を手にした目的は、現代の性風俗産業における奴隷制度を確認したいからということにありました。しかし、この本に書かれた女性たち5人はキャバ嬢だったので、それを読み取ることはできませんでした。売買春ではないキャバクラは、借金を抱えた女性がその返済のために拘束されるほどの「いい収入」ではありません。奴隷制度の前提として「本人の意志で辞めることができない」ということがあり、キャバクラはいつでも辞めることができます。

ただ、辞めることができるということと、他に選択肢がないということは、どれほど違うのでしょうか。

彼女たちの体験を読むことは、こんな社会はおかしいと確信するには十分です。

援交をやってる女性は、キャバ嬢よりも壮絶でした。家出し、日々の糧を得るために毎夜違う男性と性行為します。そのうちに彼と付き合うようになってからは、彼との生活のために援交を。その彼女の話からは、性を売るということがもつ本質的な矛盾を感じずにはおれません。

きっと彼女は自分の体験を誰にも言えないまま生きていくのでしょう。(日本軍「慰安婦」被害者と同じように。)

この女性だけが、著者が今では連絡が取れなくなっているということも、その絶望の深さを感じずにはいられません。

著者は琉球大学の教授で、非行少年少女の研究をしています。イロモノではない、しっかりとした書物で、信頼に値すると思います。また、この本の売上は「強姦救援センター・沖縄REIKO」に寄付されるそうです。

日本軍「慰安婦」問題からはほんの少しテーマがずれるのかもしれませんが、本質的なところではそれほど違いないのではと思い、ここに投稿します。

機会があれば一度手にとってみてください。

(だい)

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